【ベトナム労務】公務員の基礎賃金(最低賃金)の増額を定める政令No.24/2023/ND-CP(2023年7月1日施行)

コラム
2023.05.16
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【ベトナム労務】公務員の基礎賃金(最低賃金)の増額を定める政令No.24/2023/ND-CP(2023年7月1日施行)...
ベトナムの公務員の「公務員の基礎賃金(最低賃金)(ベトナム語:mức lương cơ sở đối với cán bộ)」の増額を定める政令No.24/2023/ND-CP(「本政令」といいます。)が発布されました。 政令No.38/2019/ND-CP(2019年7月1日施行)に代わって、2023年7月1日に施行されます。 *ベトナム政府電子ポータル:政令No.24/2023/ND-CP(ベトナム語) この金額は、ベトナムの通常の労働者の最低賃金とは異なり低額に設定されており、公務員の基本的な給与を定めるものです。 通常の企業運営では関係ないように見える基準ではありますが、社会保険料などの金額の上限が公務員の最低賃金に基づいて計算されているという点が重要となります。 なお、一般労働者の最低賃金とは金額など異なりますのでご注意ください。 公務員の基本給(最低賃金) 149万VND/月 → 180万VND/月  中央・地方の公務員(公務員法で規定) 行政機関・公的組織における一部種類の業務契約をしている者 人民軍の将校、職業軍人、士官、兵士、職員 機密の執行組織で働く者 など 2023年7月1日から施行 通常の労働者の社会保険料を算定する基礎となる賃金の上限(最大額)が、公務員の基礎賃金の20ヶ月分 つまり、この変更で社会保険料の算定基礎となる賃金の上限は以下のように修正されます。 2023年7月1日より前: 149 万VND×20 = 2980 万VND 2023 年7月1日以降: 180 万VND×20 = 3600 万VND ※なお、社会保険法の改正案では、この上限金額を変更する案も出ているので将来的な変更には注意が必要給与が2980万VNDを超える方は、社会保険対象の外国人も含め、社会保険料が増額することとなります。

【ベトナム労務】就業規則の登録手続について教えてください。

コラム
2023.05.08
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【ベトナム労務】就業規則の登録手続について教えてください。
ベトナム2019年労働法(45/2019/QH14 号)及び政令145/2020/ND-CP(以下「政令145号」といいます)では、企業が作成すべき就業規則について詳細を規定しています。ベトナムの労務でも就業規則は重要な文書となるため、以下ご参照ください。 使用者(雇用主)は、就業規則を公布しなければならないとされていますが、10人以上の場合書面によらなければならないとされています。従業員数が10人未満の雇用主は、書面による規則は必要ありませんが、その場合、労働規律および物的責任については、雇用契約の内容に含める必要があります。 就業規則の内容として、労働法及び政令145号で規定されるものは以下のような項目です。 a) 1日および1週間の具体的な労働時間、休憩時間; 交代制勤務; シフトの開始および終了時間; 時間外労働(ある場合); 時間外労働の特別なケース; 追加休憩; シフト間の休憩; 週休日; 年次休暇、個人休暇、無給休暇; b) 職場の秩序; 職場、勤務時間中の移動; 行動規範; 服装規定; 雇用主による職務配置への遵守; c) 職場の衛生および安全: 規則や規定、手続き、職場衛生、労働安全および消防安全の確保に関する措置への遵守責任; 個人用安全装置および職場での職業衛生および安全確保に役立つその他の装置の使用および保管; 職場での清掃、除染および消毒; d) 雇用主による職場でのセクシャルハラスメントの防止および対策に関する規定; この政令の第85条に規定された職場でのセクシャルハラスメント対策の手続き; e) 雇用主の財産、営業秘密、技術秘密および知的財産の保護: 財産、書類、技術秘密、営業秘密、知的財産のリスト; それらの保護の責任と対策; これらの財産および秘密に対する侵害の定義; f) 労働法第29条第1項に従って、従業員が雇用契約に反して一時的に再配置される具体的なケース; g) 特定の従業員の違反とそれに対応する懲戒処分; h) 物的責任: 従業員が道具や器具、財産を損傷させたり失ったりした場合や、物質消費限度を超えた場合の賠償責任; 損害に応じた賠償レベル; 賠償請求権限を持つ者; i) 懲戒処分を行う権限を持つ者: 労働法第18条第3項に定められた雇用主を代表して雇用契約を締結する権限を持つ者、または就業規則で特定された具体的な者。 10人以上の労働者を使用する場合、就業規則は各地域の労働局に登録しなければなりません。就業規則を公布した日から10 日以内に、就業規則の登録書類を提出しなければならないとされています。この場合、登録手続をしなければ就業規則が有効とならないため注意が必要です。 10 人未満の労働者を使用する使用者が就業規則を書面により公布する場合、その効力は使用者が就業規則内で規定することとされています。 登録のための手順は以下のとおりです。 ①就業規則を発行または改訂する前に、この政令の第41条第1項に従って、社内労働組合(ある場合)と協議する ②就業規則を公布した日から10 日以内に、各地域の労働局に対して就業規則の登録書類を提出する (労働局が就業規則の全ての登録書類を受領した日から15 日後に就業規則が有効となるとされています。) ③労働局は、就業規則の内容に法令に反する規定がある場合、登録書類を受領した日から7 営業日以内に、使用者に修正、補足及び再登録をするよう指導する(実際にはもっと期間がかかるケースがある) ④発行された就業規則は、すべての社内労働組合(ある場合)およびすべての従業員に送付される。就業規則の主要内容は、必要に応じて職場で公に掲示される ※なお、支店等複数の拠点を有している会社については、それらの拠点を管轄する労働局に対しても登録した就業規則を送付する必要があります(それぞれの複数拠点で異なる就業規則の登録も可能)。 なお、②の書類提出時の必要書類は以下のものです。 1.就業規則登録申請書 2.就業規則 3.社内労働組合がある場合は、社内労働組合の意見書 4.労働規律及び物的責任に関する規定を定めた使用者の文書(もしあれば)

ベトナムの2023年4月末から5月初頭の連休について(フン王の命日・戦勝記念日・メーデー)

コラム
2023.04.10
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ベトナムの2023年4月末から5月初頭の連休について(フン王の命日・戦勝記念日・メーデー)
労働法(法律 45/2019/QH14 号)第112条第1項e号により、旧暦の3月10日であるフン王の命日(原文:Ngày Giỗ Tổ Hùng Vương)は祝日となります。2023年は4月29日がフン王の命日です。 また、同法同項c号により、4月30日=戦勝記念日(原文:Ngày Chiến thắng)および5月1日=国際メーデー(原文:Ngày Quốc tế lao động)も祝日とされており、2023年4月29日から5月1日までの三日間は連続して祝日が続きます。   祝日に労働者が勤務を行う場合、労働法第98条第1項c号により少なくとも通常の勤務日の300%に相当する賃金を支給する必要があります(会社の週休日に関係なく、2023年4月29日から5月1日の三日間の間に従業員を勤務させる場合)。   週休日が、祝日と重なる場合、労働法第113条第3項により、次の営業日に振替休日が付与されることになります。2023年は4月29日と30日が土日に当たるため、ほとんどの会社において振替休日が発生することになります。 例えば、土日が週休日の会社の場合、5月2日(火曜日)と3日(水曜日)が振替休日となります。 土曜日が勤務日、週休日が日曜のみとなっている会社は、振替休日については5月2日(火曜日)のみとなります。 振替休日における勤務は週休日に勤務を実施させる場合と法律上同様となるので、労働法第98条第1項b号により、少なくとも通常の勤務日の200%に相当する賃金を支給する必要があります。

【訪日ビザ3:研修ビザ】ベトナムで採用した従業員に現業を含む内容の研修を受けさせたい

コラム
2023.03.27
行政書士法人キャストグローバル

【訪日ビザ3:研修ビザ】ベトナムで採用した従業員に現業を含む内容の研修を受けさせたい
日本国内において外国籍の従業員が研修を行う場合、殆どのケースで在留資格を取得する必要があります(出入国管理及び難民認定法第二条の二)。 これが大前提になります(初回の記事はこちらから)。 報酬の有無、雇用、研修内容に着目して訪日ビザを以下のとおり分類しました。 報酬の発生 雇用契約 研修内容 企業内転勤 〇 本国又は日本法人 デスクワーク 研修 ×(実費の範囲においてのみ可) 本国 デスクワーク 技能実習 〇 日本法人 単純労働を含む実務的な作業   研修ビザは上記のとおり、報酬の支払いが発生しない社内研修等を行う場合に限定して取得するビザになります。 特徴しては「OJTを含む研修内容が条件付きで想定されている事(主に公的機関が対象)」「報酬の支払いが想定されていない事」という点が挙げられます。 また、在留期間は3月、6月、1年で設定されています。(入管法施行規則別表第二) 研修ビザは海外支店の社員に社内研修や工場見学を行わせる為に取得するのが一般的です。又、来日する人材が研修を通して取得する技術の内容が、本国では取得が難しいものであり、かつ学んだ技術を本国にフィードバックする事が研修ビザ取得の前提となります⦅出入国管理法別表第一の四⦆   研修生は報酬の支払いを受ける事が出来ません、但し研修手当として生活費や交通地など実費相当額の支給を受ける事は可能です。   研修内容に実務研修を含む場合、受け入れ機関は以下のいずれかの条件を満たす必要があります。 イ 申請人が、我が国の国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が自ら実施する研修を受ける場合 ロ 申請人が独立行政法人国際観光振興機構の事業として行われる研修を受ける場合 ハ 申請人が独立行政法人国際協力機構の事業として行われる研修を受ける場合 ニ 申請人が独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構技術センターの事業として行われる研修を受ける場合 ホ 申請人が国際機関の事業として行われる研修を受ける場合 (平成二年法務省令第十六号出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令、法別表第一の四の表の研修の項の下欄に掲げる活動) 従って、基本的に民間企業の研修内容は現業を含まない内容で組み立てる必要があります。即ち、現業を含む研修は公的機関が行う事が想定されています   研修ビザは適切な研修スケジュールを組みたてる事が出来れば研修、見学等を通して効率的に専門的な技術を身に着けることが可能です。 しかしながら、報酬を支払う事が出来ませんし、かつ、OJTが研修の内容として認められる条件が非常に厳しく設定されています。 従って、上記注意点を踏まえた上で研修内容を精査し、報酬の支払いの有無や研修スケジュールを鑑みて条件に合致する場合においてのみ研修のビザを選択するべきだと言えます。 関連記事(コラム): 【訪日ビザ1】ベトナムで採用したベトナム国籍の従業員に日本本社で研修を受けさせたい場合の査証(ビザ)について 【訪日ビザ2:企業内転勤】ベトナムで採用した従業員にデスクワークを内容とした研修を受けさせたい 【訪日ビザ4:技能実習】現地採用したベトナム国籍の従業員に日本で長期間技能を身に着けさせたい

【訪日ビザ2:企業内転勤】ベトナムで採用した従業員にデスクワークを内容とした研修を受けさせたい

コラム
2023.03.02
行政書士法人キャストグローバル

【訪日ビザ2:企業内転勤】ベトナムで採用した従業員にデスクワークを内容とした研修を受けさせたい...
日本国内において外国籍の従業員が研修を行う場合、殆どのケースで在留資格を取得する必要があります(出入国管理及び難民認定法第二条の二)。 これが、前回コラムでお話しさせて頂いた大前提です。 前回コラムはこちら↓ 【訪日ビザ1】ベトナムで採用したベトナム国籍の従業員に日本本社で研修を受けさせたい場合の査証(ビザ)について 前回、報酬、雇用、研修内容に着目して訪日ビザを分類しました。 報酬の発生 雇用契約 研修内容 企業内転勤 〇 本国又は日本法人 デスクワーク 研修 ×(実費の範囲においてのみ可) 本国 デスクワーク 技能実習 〇 日本法人 単純労働を含む実務的な作業 企業内転勤は上記のとおり、報酬の支払いが発生し、かつ研修内容がデスクワークの場合に限定して取得するビザになります。 特徴しては「研修内容がデスクワークに限定される事」「転勤・赴任・出向等海外の子会社や関連会社との人事異動が想定されている事」という点が挙げられます。また、上記3種の在留資格中、唯一最長5年の在留資格が設定されている点も特徴的です。(出入国管理法別表第二) 企業内転勤はデスクワーク人材の一時的な人事異動等の場合に取得するのが一般的です。 来日する人材について学歴は問われませんが、1年以上の転勤元企業での継続した就労実績が求められます。⦅出入国管理法別表第三(第六条、第六条の二、第二十条、第二十一条の四、第二十四条関係)⦆   ・デスクワークのみに業務内容が限定される事 企業内転勤で従事する業務内容は学問的・体系的な知識を要するデスクワークが想定されています。これは在留資格技術人文知識国際業務と同様の業務内容と表されています。⦅出入国管理法 附 則 (令和四年一二月九日法律第九七号) 抄、別表第一の二⦆尚、研修の内容にOJTが含まれる場合はビザが取得できない可能性がありますので注意が必要です。 ・在留期間更新申請時に国内での納税義務を果たしているか問われる事 現地法人から直接給与を受け取っている場合確定申告が必要な可能性がありますので注意が必要です。納税証明書を期間更新の際に提出する必要が有ります。 企業内転勤は申請人本人の学歴も要しませんし、辞令に応じた在留期間ではありますが、期間更新を受ける事で長期間滞在し研修を受ける事も可能です。しかしながら、単純労働を前提とした研修には対応出来ません。従って、上記注意点を踏まえた上で研修内容を精査し、雇用形態や研修スケジュールが合致する場合においてのみ企業内転勤のビザを選択するべきだと言えます。 次の記事: 【訪日ビザ3:研修ビザ】ベトナムで採用した従業員に現業を含む内容の研修を受けさせたい 【訪日ビザ4:技能実習】現地採用したベトナム国籍の従業員に日本で長期間技能を身に着けさせたい

【訪日ビザ1】ベトナムで採用したベトナム国籍の従業員に日本本社で研修を受けさせたい場合の査証(ビザ)について

コラム
2023.02.06
行政書士法人キャストグローバル

【訪日ビザ1】ベトナムで採用したベトナム国籍の従業員に日本本社で研修を受けさせたい場合の査証(ビザ)について...
日本国内において外国籍の従業員が研修を行う場合、殆どのケースで在留資格を取得する必要があります(出入国管理及び難民認定法第二条の二)。これは、ベトナムで雇用関係にある従業員が日本に入国する場合においても同様です。 在留資格を取得する必要があるかどうかは日本国内で想定されている研修内容に拠ります。 例えば商談や展示会への出席、オリエンテーションの様な限定された研修内容であれば日本国内での在留資格を取得することなく、短期滞在ビザで研修を行う事も考えられます。 短期滞在ビザで研修を行うのは特定のケースしか想定されませんが、ポイントしては「報酬の受け取りが発生しない事」「受け入れ法人が研修を通して利益を得ていない(成果物等を介して)事」という点が挙げられます。又、その短期滞在ビザでの滞在期間は90日を超える事は出来ません。(出入国管理及び難民認定法別表第二)。 従って外国籍従業員が研修を行う場合には在留資格を取得するのが一般的です。 研修に対応する在留資格は、「企業内転勤」、「研修」、「技能実習」等が想定されます。その他「技術人文知識国際業務」も考えられますが、長期滞在を想定した在留資格ですのでで、帰国を前提とした研修とすると使い勝手の点で劣ります(出入国管理及び難民認定法別表第一(第二条の二、第二条の五、第五条、第七条、第七条の二、第十九条、第十九条の十六、第十九条の十七、第十九条の三十六、第二十条の二、第二十二条の三、第二十二条の四、第二十四条、第六十一条の二の二、第六十一条の二の八関係))。 在留資格の用途から大別すると「企業内転勤」「研修」はデスクワーク、「技能実習」は実務作業を行う事が在留資格上認められます。それぞれメリットデメリットを踏まえて在留資格の選択方法について解説します。   「企業内転勤」、「研修」、「技能実習」を報酬の有無、雇用契約の主体、研修内容に分けると以下のとおり大別されます。 報酬の発生 雇用契約 研修内容 企業内転勤 〇 本国又は日本法人 デスクワーク 研修 ×(実費の範囲においてのみ可) 本国 デスクワーク 技能実習 〇 日本法人 単純労働を含む実務的な作業 企業内転勤、研修、技能実習で各々契約の形態や報酬の支払い方法が変わってくる事が見て取れるものと思います。 例えば単純労働を前提とした研修であれば技能実習しか選択肢が無い事になりますし、デスクワークが前提でかつ給与を支払うのを前提とした研修とするのであれば企業内転勤しか選択肢は無いという事になります。(平成二年法務省令第十六号出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令) また、研修の在留資格は、報酬の支払いは不可となりますが、実費を超えない範囲であればこれは支給しても問題はないと考えられています。例えば宿泊費、食費等滞在中の日常生活に必要な費用は支給して問題ありません。 したがって、研修内容を精査し、雇用形態や研修スケジュールを綿密に兼用した上で在留資格を選択する必要があると言えます。 ※次回以降、各在留資格についてそれぞれ取得の流れや注意点について比較検討していきます。 【訪日ビザ2:企業内転勤】ベトナムで採用した従業員にデスクワークを内容とした研修を受けさせたい 【訪日ビザ3:研修ビザ】ベトナムで採用した従業員に現業を含む内容の研修を受けさせたい 【訪日ビザ4:技能実習】現地採用したベトナム国籍の従業員に日本で長期間技能を身に着けさせたい

【ベトナム労務】労働者が退職時に行うべき会社側の手続について

コラム
2023.02.02
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【ベトナム労務】労働者が退職時に行うべき会社側の手続について
ベトナムにおける労働契約の終了事由については、法律第45/2019/QH14号(以下「労働法」といいます。2021年1月1日施行。)第34条に規定されています。このうち主な終了事由としては以下のものを挙げることができます。  労働契約期間の満了  両当事者の合意  懲戒解雇処分  片方当事者からの一方的解除 (その他の終了事由については、労働法第34条をご確認下さい。) 原則として、会社は労働契約の終了に当たって、労働契約の終了を通知する必要があります(労働法第45条第1項)。労働契約期間満了や合意による終了の場合は、特に通知についての期限は規定されていません。そのため、契約終了日までに通知すれば足りると解します。 法律上定められる一方的な解除事由(後述)がある場合、労働契約の一方的な解除が可能となります。 会社による一方的解除の場合、事前の通知が必要になる場合があります。 事前の通知が必要な場合は、労働契約の期間に応じて、以下の法定通知期間が設定されています(労働法第36条第2項)。 無期労働契約:45日以上前 12か月以上36ヶ月以下の有期労働契約:30日以上前 12か月未満の有期労働契約:3営業日以上前 なお、以下に記載する解除事由が無断欠勤の連続等の場合には、そもそも連絡を取ることが難しい状況になってしまっているので事前の通知は不要です。 また、懲戒解雇の場合は特殊な手続となるため、4を参照ください。 理由なく5営業日以上連続して無断欠勤があった場合や、労働者が定年に達した場合(契約により定年後も雇用する内容となっている場合は解除事由となりません)などには会社は当該労働者との契約を一方的に解除できます。 他にも会社が定めた業務評価基準に達しない場合や、長期の治療によっても疾病等から回復しない場合も会社からの一方的解除事由となります。もっとも、この場合事前に詳細な業務評価基準を定めておくことや、疾病等から回復しないことについて医師などの専門家による書面が必要と考えます。 その他の一方的解除事由については、労働法の第36条をご確認ください。 職場において窃盗や横領、暴力行為によって他人に傷害を負わせる、その他会社に重大な損害をもたらす行為をした場合など(詳しくは労働法第125条をご確認下さい)は、一定の手続きを踏むことにより当該労働者を懲戒解雇することができます。 懲戒手続きを行なうためには、当該従業員の弁明等を聞くため、聴聞に相当するような手続(便宜上以下「聴聞会」といいます)を実施する必要があります。大まかな手続きは以下のとおりです(政令第145/2020/ND-CP号(以下「政令第145号」といいます)第145号第70条)。 ① 会社は、聴聞会が開催される少なくとも5営業日前までに、懲戒の対象となる従業員(以下、「対象従業員」という)およびその弁護人(いる場合)に対して、聴聞会の時間と場所、対象従業員の氏名(フルネーム)、違反の内容を通知しなければなりません。会社は、聴聞会の実施前に対象従業員およびその弁護人(以下、これらの人物を総称して「参加者」といいます)が当該通知を受け取ったことを確認します。 ② 参加者は、①の通知を受け取った場合、聴聞会への出席について会社に連絡しなければなりません。もし参加者のいずれが聴聞会に参加できない場合、会社と対象従業員は、聴聞会の日時または(および)場所の変更について合意します。当該変更についての合意ができない場合は、会社は当該場所と日時について最終決定を下すことができます。 ③ 会社は、参加者への上記の通知または変更についての合意に従い、聴聞会を開催します。聴聞会当日に、参加者の出席が確認できない場合であっても会社は聴聞会を開催し、実施することができます。 ④ 聴聞会の議事録は、聴聞会が終了する前に作成され承認されなければなりません。当該議事録には、参加者の署名がなされなければならない。参加者が署名を拒否する場合には、当該拒否者の氏名(フルネーム)と拒否の理由を議事録に記載します。 ⑤ 懲罰について権限を有する者は、法定の期間内に懲罰についての決定を下し、当該決定について参加者に通知しなければなりません。 上記の手続きを踏まない等、懲戒処分の手続に違反があった場合、懲戒処分が無効となり、違法な労働契約の解除として扱われる可能性があるので注意が必要です。 懲戒事由については以下の原則が適用されます。 使用者は、懲戒事由についての従業員の故意・過失を立証しなければなりません(労働法第122第1項a号)。 懲戒処分の対象となる従業員(以下「対象者」といいます)が労働組合の構成員である場合、当該所属する労働組合には、懲戒処分(聴聞会)への参加権限があります(労働法第122第1項b号)。 対象者は弁護士または労働組合に弁護を依頼する権利があります(労働法第122第1項c号) 。 懲戒処分の対象となる行為が一つの場合、複数の懲戒処分を行う(たとえば、譴責と降格を同時に行う)ことは認められていません(労働法第122第2項) 1人の労働者が一時に複数の懲戒処分の対象となる行為を行った場合、もっとも重大な違反となる行為に対して最も重い形式のみが適用されます(労働法第122第3項)。 したがって、懲戒処分を行うに当たっては、会社は十分な証拠集めを行っておく必要があります。 原則として契約終了から14営業日以内に、会社はすべての金銭等を労働者に支給する必要があります(労働法第48条第1項柱書)。通常想定されるのは以下のものとなります。 1)給与 未払いの給与があれば、これを支給する必要があります。 2)未消化の有給 退職する労働者に未消化の有給がある場合、会社はこれを買い取れなければなりません(労働法第113条第3項)。 未消化の有給については、退職時の前月の給与を基準として1日あたりの給与額を算定し、これに未消化の有給の日数を乗じた金額を支給する必要があります(政令第145号第67条第3項)。 3)退職手当 労働者が12か月以上の勤務実績がある場合には、懲戒解雇による退職の場合を除いて、1年につき半月分の賃金に相当する退職手当を支給しなければなりません(労働法第46条第1項)。前記の半月分の給与とは退職前の6ヶ月分の給与の平均額を基準として算定されます(労働法第46条第1項)。 この点、失業保険の加入(納付)期間は、退職手当を算定するための期間から控除されます(会社法第46条第2項)。そのため、会社が適切に社会保険に関わる手続きを行なっている場合は、高額の退職金を会社が負担する必要はありません。 試用期間について社会保険の加入手続きを行なっていなかった場合、女性の労働者について産休を取得した場合現行法上では社会保険の納付ができないので、これらの期間がないか労働者の社会保険の加入状況を確認する必要があります。 また、退職者が外国人労働者である場合(かつ12か月以上の勤務実績がある場合)、外国人はベトナムの失業保険の加入対象でないため、法令上は退職金の全額を会社が負担する必要がありこの点注意が必要です。

【ベトナム労務】試用期間中の有給休暇はどのように扱われますか。

コラム
2023.01.11
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【ベトナム労務】試用期間中の有給休暇はどのように扱われますか。
ベトナムにおいては、労働契約で合意した労働日数の50%以上を勤務した場合、一月勤務するごとに一日の有給休暇が発生します(政令第145/2020/ND-CP号(以下「政令第145号」といいます)第66条第2項・法律第45/2019/QH14号(以下「労働法」といいます)第113条第2項)。これが、勤務期間一年未満の労働者に対する有給休暇のルールです。 原則として一年に12日間の有給休暇が付与されますが(労働法第113条第1項a号)、勤続年数が5年経過するごとに有給休暇の日数が一日加算されることになります(労働法第114条)。 有給は労働者の権利として認められているものですから、退職時に未消化の有給休暇がある労働者に対しては、会社は当該未消化の有給休暇を買い取らなければなりません(労働法第113条第3項)。 買取を実施する単価の計算の基準となる給与額ですが、退職時の前月の給与額を基準として計算されると規定されています(政令145号第67条第3項)。 なお、買取時の一日当たりの給与額については、有給取得日に勤務した場合の通常の給与額である300%(労働法第98条第1項c号)を基準とすべきという見解もあるようですが、前記の第67条第3項が単に前月の給与額を算定の基準とすべきとのみ規定しており、割増賃金について一切言及していないため、通常の給与額100%の一日あたりに相当する金額に未消化の有給日数を乗じた金額を支給すれば足りると考えられます。 政令第65条第2項によれば、試用期間終了後も当該雇用主のもとで働き続ける場合の試用期間は、有給を計算する際の労働期間として算定されることが規定されています。この規定により、例えば試用期間が60日の場合、試用期間明け後に、当該労働者は2日間の有給を保持していることになります。 一方同項の文言は、試用期間終了後となってているため、その反対解釈として試用期間中(試用期間終了前)の就業期間は、これが終了するまでは有給を算定する際の、就業期間としては加算されないと考えられます。 したがって、試用期間中は労働者に対して有給は発生せず、正式な労働契約に移行することなしに契約を終了させる場合※は、契約終了時の有給の買取も不要と考えます。 ※試用期間中は、特段の理由なく契約を終了することが可能です(労働法第27条第2項参照)。

ベトナムの駐在員事務所について

コラム
2023.01.09
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ベトナムの駐在員事務所について
日本で正式に設立され、登録(記)されている会社で、1年以上営業活動を継続している会社は、ベトナムに駐在員事務所を設立することが可能です(政令07/2016/ND-CP号(以下「政令07号」といいます)第7条第1項・第2項)。 駐在員事務所は、外国企業がベトナムに進出するに当たっては最も簡便な形態の一つですが、以下に記載するように法的地位にいくつかの制限があります。 駐在事務所にはベトナムの法律上法人格が認められていません。そのことから、その他の会社形態とは異なり無限責任(責任の範囲が出資額に限定されない)を負うとされています。また、法人税の納付義務も発生しません。 上記のとおり駐在員事務所には法人格がなく、法律に規定された範囲でのみ活動が認められます。以下、駐在員事務所ができること・できないことについてその主要な内容を記載します。 できること できないこと 外国本社との連絡業務、市場調査、外国投資家の投資・経営の機会の促進(政令07号第30条) 営利目的の活動(商法第18条第1項) 事務所や必要な施設および設備の賃借(商法第17条第2項) 外国本社の代理人として契約を締結し、また既に締結された契約の修正等を実施すること(商法第18条第3項) 支出専用の銀行口座の開設(商法第17条第4項参照) 顧客から入金を受けること 就業するベトナム人および外国人の雇用(商法第17条第3項) ※表中に引用されている商法とは、法律36/2005/QH11号を指します。 駐在員事務所の存続期間は法律上5年とされています。もっとも、更新することにより5年を超えて事務所を存続させることが可能です(政令07号第9条)。 駐在員事務所長について以下のような法律の規定が存在します。 その他会社の法定代表者には、少なくとも一人がベトナムに居住しなければならないという居住義務が法律上規定されています(法律59/2020/QH14号(企業法)第12条第3項)。一方、駐在員事務所長については居住義務について明示した規定が存在しません。 もっとも、居住義務はないものの、駐在員事務所長はベトナムに不在する場合、その権限を誰かに委任しなければならないとされています(政令07号第33条第3項)。受任者については法令の規定上、特に限定がなされていませんが、法令の趣旨から考えて受任者はベトナム居住者でなければならないと考えます。 以下の役職(職責)に就くことが法律上禁止されています(政令07号第33条第6項) a. 同じ外国法人の支店の代表 b. 他の外国法人の支店の代表 c. その外国法人の法的代表者又は、他の外国法人の法的代表者 d. ベトナム法律に従い設立する経済組織の法的代表者`

【ベトナム労務】2022年の時間外労働時間の上限引き上げ措置終了について

コラム
2023.01.04
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【ベトナム労務】2022年の時間外労働時間の上限引き上げ措置終了について
2022年3月23日付けで、ベトナムの国会常務委員会は1年及び1月あたりの残業時間に関する議決17/2022/UBTVQH15号(以下「議決15号」といいます)を採択し、残業時間について、労働法の規定(同法第107条)よりも長い時間労働者に課すことを許容していました。 議決15号の詳細は、以下の記事をご参照ください。 https://cast-vietnam.com/news/qa_20220524/ 同議決は、別の議決30/2021/QH15号(以下、「議決QH15号」といいます)に基づき発行されました。議決QH15号には「国会によって(同措置が)延長される場合を除き、2022年12月31日までに適用される」との記載があるところ、本措置については国会によって延長がなされませんでした。 そのため、今後国会や政府が別段の措置を取る場合は別にして、同措置は2023年1月1日以降失効し、残業時間の規制は労働法の規定に基づき規制されることになります。 労働法上の残業時間(時間外労働時間)規制の概要は以下のとおりです。 労働者の同意を得ない時間外労働は禁止(労働法第107条2項第a号) 1日の残業時間は、所定の労働時間の50%を超えないこと(同条同項第b号。例えば、8時間となっている場合は、残業は4時間までとなります) 1月あたりの残業時間が40時間を超えないこと(同条同項第b号) 1年あたりの残業時間が200時間を超えないこと(同条同項第c号。一部の業種や状況においては1年間に300時間まで時間外労働をさせることが認められています。)